である。
わたちは、ぺンが書いてゆくにつれて考える。“考える”とは、音声にならない言葉をひとりごとのように口の中で言うことだ。その言葉をペンが書き留める。書きとめた言葉がさらに次の思考を呼ぶ。これが文章表現の“現場”だ。
文章を書いた経験をふりかえれば、だれでも思いあたることだが、書き上げた文章は必ず、自分がはじめに漠然と予感していた内容とは違ったものになっている。心の闇に一つ二つで危うく連れなって光っていた言葉が漠然と象徴していた内容と、複雑な思考を経て言葉の秩序によって組織され他人にも理解されるようになった文章との違いが、そう感じさせるのだ。
私たちは自分の考えたことを文章に表現しようとすることによって。実際には。考えていた以上のことをその表現された文章の内に発見する。これが文章表現における発見である。書かれた内容(世界)についての発見と、それが自分の中から出てきたという驚き。文章を書くということは、言葉によって、世界を知り自分を知るという二つの驚き。文章を書くということは、言葉によって、世界を知り自分を知るという二つの驚きを同時に経験することでもある。
(梅田卓夫.清水良典.服部左右一.松川由博编『高校生のための文章読本』による)
(注)おぼろげな:はっきりしない
56 ここでの①混沌とはどのような状態か。
1 書きたいことがあってもそれがほんやりしている状態
2 書こうとしても書くことがなかなか見つからない状態
3 書こうと思う内容が複雑でうまく言葉で表せない状態
4 書きたいことがたくさんあってうまくまとまらない状態
57 書き上げた文章が②予感していた内容とは違ったものになっているのはなぜか。
1 他人に理解されるように文章を整理して書き直したから
2 心に浮かんだ言葉で表現したら複雑な内容になったから
3 書き進むにつれて言葉が自然にわき出てペンを動かしたから
4 書き進むにつれて他人にわかるような文章にまとまったから
58 文章を書くことについて筆者はどのように述べているか。
1 自分の複雑な思考を他人に示すためのものである
2 自分の考えを言葉にするという喜びを伴うものである
3 考え内容以上のことを表現でき、自分を発見するものである
4 書きたい内容がまとまり、自分の思考も再確認できるものである
問題10.次の文章を読んで、後の問いに対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
以上は、筆者が著書の中で「哲学の役割」について書いたものである。
ここで大切なのは、とりわけ科学の意義と限界をしっかりと見定めて、人間的知の全体
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